
この記事のポイント
- 車両現場の電池リスクは「駆動用バッテリー」「車載機器」「持ち込み機器」の3つに分けて考える
- 夏場の車内放置は熱暴走リスクを高める。NITEも高温環境への注意を呼びかけ
- 電池火災は消えたように見えても再発火する。消火後の警戒と119番通報まで含めて教育する
- 運転席から手が届く初期消火手段の有無が、火災の進行を大きく左右する
車両の現場に広がる3つの電池リスク
1. EV・ハイブリッド車の駆動用バッテリー
駆動用リチウムイオンバッテリーは容量が大きく、万一熱暴走に至った場合のエネルギーも大きくなります。事故入庫車(衝突歴のある車両)はバッテリーに外部衝撃が加わっている可能性があり、外見で異常が分からなくても内部短絡の起点になり得ます。保管場所を建屋や他車両から離す、経過観察のルールを決めるなど、入庫時のリスク評価を仕組みにしておきましょう。
2. 車載機器・業務機器
ドライブレコーダー、デジタコ連携端末、ハンディターミナル。業務機器の多くがリチウムイオン電池で動いています。充電は営業所の決められた場所で行い、損傷した充電ケーブルや非純正充電器を使わないこと。営業所の充電コーナーも、可燃物から離す・タコ足配線を避けるといった基本の管理が効きます。
3. 乗務員の持ち込み機器
最も管理が難しいのが、乗務員個人のモバイルバッテリーやスマートフォンです。総務省消防庁の調査では、モバイルバッテリーの出火件数は令和6年の290件から約7割増の482件へと急増しています。特に危険なのが夏場の車内放置です。NITE(製品評価技術基盤機構)も、高温になる車内へのモバイルバッテリー放置に注意を呼びかけています。「乗務後は車内に残さない」を運行ルールに明文化しましょう。
整備工場で押さえるべき防火管理
整備工場のチェックリスト
- 高電圧系統の作業は資格・手順を遵守する。EV・HVの整備は感電と短絡の両リスクを伴う。教育を受けた作業者・絶縁工具・手順書をセットで
- 事故入庫車の保管場所を決める。衝突歴のある電動車は他車両・建屋・可燃物から距離を取り、経過観察する
- バッテリー・電池機器の充電場所を指定する。工場内の充電は不燃エリアに集約し、夜間無人充電を避ける
- 初期消火手段を作業エリアに配置する。法定消火器に加え、電池火災の冷却を想定した消火用品を「作業者が迷わず使える場所」に
- 「噴出中は近寄らない」を全員に教育する。消えたように見えても再発火に警戒し、119番通報までを初期対応とする
リチウムイオン電池火災がなぜ再発火するのか、どの消火手段に冷却効果があるのかは「リチウムイオン電池火災に消火器は効かない?再発火の仕組みと正しい初期消火」で詳しく解説しています。
運送会社・バス事業者の車両管理
運行中の車両は、火災が起きても消防の到着まで時間がかかる場所を走っていることが珍しくありません。だからこそ「予防」と「初期消火」の備えが重要になります。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 車内放置の禁止 | モバイルバッテリー・予備電池は乗務後に持ち出す。夏場のダッシュボード付近は特に厳禁 |
| 充電ルール | 走行中の車内充電は適合が確認された機器・ケーブルで。損傷したケーブルは使わない |
| 初期消火手段の車載 | 運転席から手が届く位置に配置し、全乗務員が使い方を知っている状態にする |
| 乗務員教育 | 「噴出中は近寄らない→収まったら消火→再発火に警戒して119番」の原則を周知 |
| 異常時の報告 | 機器の膨張・異常発熱・異臭は乗務前点検・日報で報告し、使用を止める |
なお、モバイルバッテリーは飛行機への預け入れが禁止されているなど、輸送モードによって扱いが厳しく定められています。出張の多いドライバー・添乗員の方は「飛行機にモバイルバッテリーは持ち込める?2026年最新ルール」も参考にしてください。
倉庫・営業所と一体で考える
車両の電池火災対策は、営業所・倉庫の充電エリア管理と地続きです。フォークリフト充電ステーションを含む拠点全体の防火管理は「倉庫・物流センターのリチウムイオン電池火災対策」で詳しく解説しています。車両と拠点、両方をセットで見直すことで、会社全体の火災リスクを体系的に下げられます。
よくある質問
トラックの車内にモバイルバッテリーを置きっぱなしにしても大丈夫ですか?
避けるべきです。車内は夏場に高温になりやすく、高温環境はリチウムイオン電池の劣化・熱暴走リスクを高めます。乗務後は車内に残さず持ち出す運用をルール化しましょう。
EVやハイブリッド車の火災は普通の車両火災と何が違いますか?
駆動用バッテリーの熱暴走が関わる場合、表面の炎を消しても内部の発熱が続き、再発火の危険が長時間残る点です。大量の水による冷却と、消火後の再出火への警戒が必要です。
運転席から使える初期消火の備えはどう考えればいいですか?
運転席からすぐ手が届く位置に初期消火手段を置き、全乗務員が使い方を知っている状態を作ります。ただし噴出・破裂の危険がある間は近寄らないことが大前提です。
まとめ
- 車両現場の電池リスクは駆動用バッテリー・車載機器・持ち込み機器の3層
- 夏場の車内放置は厳禁。「乗務後は持ち出す」を運行ルールに明文化する
- 整備工場は高電圧作業の手順遵守と事故入庫車の保管管理を仕組み化する
- 初期消火手段は「運転席・作業者から手が届く位置」に配置し、教育とセットで機能させる
株式会社TCIは、バス・トラック・重機・建機の安全対策機器を手がけてきたメーカーとして、車両・整備工場向けのリチウムイオン電池火災対策製品の取り扱いを進めています。車載用初期消火用品の選定・台数のご相談はリチウム電池火災・防災の相談フォームからお気軽にどうぞ。
出典・参考資料
- 東京消防庁「住宅でも注意!リチウムイオン電池関連火災」
- 総務省消防庁「リチウムイオン電池総合対策ポータル」
- 製品評価技術基盤機構(NITE)「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を~リチウムイオン電池搭載製品は3つのCで事故を防ぎましょう~」
※ 出典リンクは公開時点の情報です。最新情報は各機関の公式サイトをご確認ください。



